8・00『ピッチャー』投球姿勢
8・01正規の投球=投球姿勢には、ワインドアップポジションとセットアップポジションとの2つの正規のものがあり、どちらでも随時用いることができる。ピッチャーは投手板に触れてキャッチャーからのサインを受けなければならない。
「原注」ピッチャーがサインを見終わってから投手板をはずすことは差し支えないが、はずした後に素早く投手板に踏み出して投球することは許されない。このような投球は審判員によってクイックピッチと判断される。ピッチャーは投手板をはずしたら必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない。ピッチャーがサインを見終わるたびに投手板をはずすことは許されない。
(a)ワインドアップポジション
  ピッチャーはバッターに面して立ち、その軸足は投手板に触れて置き、他の足の置き場所には制限がない。
  この姿勢から、
  @バッターへの投球に関連する動作を起こしたならば中途で止めたり、変更したりしないでその投球を完了しなければならない。
  A実際に投球するときを除いてどちらの足も地面から上げてはならない。ただし、実際に投球するときは自由な足(軸足でない足)を一歩後方に引きさらに一歩前方に踏み出すこともできる。ピッチャーが軸足を投手板に触れて置き(他の足はフリー)、ボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。
「原注1」ワインドアップポジションにおいては、ピッチャーは軸足でない足(自由な足)を投手板の上か、前方か、後方かまたは側方に置くことができる。
「原注2」本条(a)項の姿勢からピッチャーは、
  @バッターに投球しても良い。
  Aランナーをアウトにしようとして塁に踏み出して送球しても良い。
  B投手板をはずしても良い。(ボールを両手で保持したピッチャーは投手板をはずしたら必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない)投手板をはずしたときには最初に軸足からはずすべきで、自由な足を最初にはずすことは許されない。=違反すればボークとなる。
「注1」アマチュア野球では、ピッチャーの軸足及び自由な足に関し、次のとおりとする。
 (1)ピッチャーはバッターに面して立ち、その軸足は(投手板の側方にはみ出さないように)全部投手板の上に置くか、投手板の前縁に触れて置き、他の足は、投手板の上に置くか、投手板の後縁及びその延長線より後方に置く。
 (2)ピッチャーが軸足の全部を投手板の上に置くか、投手板の側方にはみ出さないようにその前縁にピッタリと触れて置き、他の足を投手板の上か、投手板の後縁及びその延長線より後方に置いてボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。
 (3)ピッチャーは軸足でない足(自由な足)を投手板から離して置くときは、投手板の後縁とその延長戦の後方に置くことを許している。ただし、投手板の両横に置いてはならない。ピッチャーは自由な足を一歩後方に引いてから一歩踏み出すことは許されるが、投手板の両横、すなわち、1塁側または3塁側へ踏み出すことは許されない。
「注2」ピッチャーが投球に関連する動作をして身体の前方で両手を合わせたらバッターに投球すること以外は許されない。従ってランナーをアウトにしようとして塁に踏み出して送球することも投手板をはずすこともできない。違反すればボークとなる。
(b)セットアップポジション
  ピッチャーがバッターに面して立ち、軸足を投手板に触れ、他の足を投手板の前方に置き、ボールを両手で身体の前方で保持して、完全に動作を静止した時、セットポジションをとったとみなされる。
 この姿勢から、
  @バッターに投球しても塁に送球しても軸足を投手板の後方(後方に限る)にはずしてもよい。
  Aバッターへの投球に関連する動作を起こしたならば中途で止めたり、変更したりしないでその投球を完了しなければならない。
 セットポジションをとるに際して“ストレッチ”として知られている準備動作(ストレッチとは、腕を頭上または身体の前方に伸ばす行為をいう)を行うことができる。しかし、一度ストレッチを行ったならばバッターに投球する前に必ずセットポジションをとらなければならない。
 ピッチャーはストレッチに続いて投球する前には
 (a)ボールを両手で身体の前方で保持し
 (b)完全に静止しなければならない。
 これは義務付けられていて、審判員はこれを厳重に監視しなければならない。ピッチャーは、しばしばランナーを塁に釘付けにしようと規則破りを企てる。ピッチャーが“完全な静止”を怠った場合には審判員は直ちにボークを宣告しなければならない。
「注」アマチュア野球では、ピッチャーの軸足及び自由な足に関し、次のとおりとする。
 (1)ピッチャーは、バッターに面して立ち、その軸足は(投手板の側方にはみ出さないように)全部投手板の上に置くか、投手板の前縁にピッタリと離れないようにつけて置き、他の足を投手板の前縁及びその延長線より前方に置いて、ボールを両手で身体の前方に保持し完全に動作を静止する。
 (2)ピッチャーは、軸足を投手板からはみ出すことなくその全部を投手板の上に置くか、投手板の前縁にピッタリと離れないようにつけて置かなければならない。軸足の横を投手板にわずかに触れておいて、投手板の端からはみ出して投球することは許されない。
「原注」ピッチャーはセットポジションをとるに先立って片方の手を下におろして身体の横につけていなければならない。この姿勢から中断することなく一連の動作でセットポジションをとならなければならない。
 ランナーが塁にいない場合、セットポジションをとったピッチャーは、必ずしも完全静止をする必要はない。しかしながら、ピッチャーがバッターのすきをついて意図的に投球したと審判員が判断すれば、クイックピッチとみなされ、ボールが宣告される。8・05(e)参照。
「注1」我が国では、本項「原注」の前段は適用しない。
「注2」本条(a)(b)項でいう“中途で止めたり、変更したり”とはワインドアップポジション及びセットアップポジションにおいてピッチャーが投球動作中に故意に一時停止したり、投球動作をスムーズに行わずに、ことさら段階をつけるモーションをしたり手足をぶらぶらさせて投球することである。
「注3」ピッチャーがセットポジションをとるに当たっては、投手板を踏んだ後投球するまでに必ずボールを両手で保持したことを明らかにしなければならない。その保持に際しては身体の前面ならどこで保持してもよいが、一旦両手でボールを保持して止めたならばその保持した箇所を移動させてはならず、完全に身体の動作を停止して首以外はどこも動かしてはならない。
「注4」セットポジションンからの投球に際して自由な足は、
  @投手板の真横に踏み出さない限り、前方ならどの方向に踏み出しても自由である。
  Aワインドアップポジションの場合のように一歩後方に引き、そして更に一歩踏み出すことは許されない。
「注5」ピッチャーはランナーが塁にいるときセットポジションをとってからでもプレイの目的のためなら、自由に投手板をはずすことができる。この場合軸足は必ず投手板の後方にはずさなければならず、側方又は前方にはずすことは許されない。ピッチャーが投手板をはずせば、バッターへの投球はできないがランナーのいる塁にはステップをせずにスナップだけで送球することもまた送球のまねをすることも許される。
「注6」ワインドアップポジションとセットポジションとの区別なく軸足を投手板に触れてボールを両手で保持したピッチャーが、投手板から軸足をはずすに当たっては必ずボールを両手で保持したままはずさねばならない。また軸足を投手板からはずした後には必ず両手を離して身体の両側に下ろし、改めて軸足を投手板に触れなければならない。
「問」ピッチャーがストレッチを行ってからセットポジションをとるまでに両手を顔の前で接触させ、そのまま下ろし胸の前でボールを保持した。ボークになるか。
「答」たとえ顔の前で両手を接触させてもそのままの連続したモーションで胸の前に下ろして静止すれば、ボークにはならない。
(c)ピッチャーが準備動作を起こしてからでもバッターへの投球に関連する動作を起こすまでなら、いつでも塁に送球することができるが、それに先立って送球しようとする塁の方向へ直接踏み出すことが必要である。
「原注」ピッチャーは送球の前には、必ず足を踏み出さなければならない。スナップスロー(手首だけで送球すること)の後で塁に向かって踏み出すようなことをすればボークとなる。
「注」ピッチャーが投手板をはずさずに1塁へ送球する場合、投手板上で軸足が踏み変わってもその動作が一挙動であれば差し支えない。しかし送球前に軸足を投手板の上で一旦踏み変えた後に送球すれば、軸足の投手板上の移行としてボークとなる。
(d)塁にランナーがいないときにピッチャーが反則投球をした場合には、その投球にはボールが宣告される。ただし、バッターがヒット、失策、四死球その他で1塁に達した場合は除く。
「原注」投球動作中にピッチャーの手から飛び出したボールがファウルラインを超えたときだけボールと宣告されるが、その他の場合は投球とみなされない。塁にランナーがいればボールがピッチャーの手から落ちたとき直ちにボークとなる。
「注」球審は反則投球に対してボークを宣告したならば、それが反則投球によるものであることをピッチャーに指摘する。なお、8・01(a)(6)に違反した場合にはそのペナルティを適用する。
(e)ピッチャーがその軸足を投手板の後方にはずしたときは、内野手とみなされる。従ってその後塁に送球したボールが悪送球となった場合には、他の内野手による悪送球と同様に取り扱われる。
「原注」ピッチャーは投手板を離れているときならば、意のままにランナーのいる塁ならどの塁に送球しても良いが、もしその送球が悪送球となればその送球な内野手の送球とみなされ、その後の処置は野手の送球に関する規則が適用される。(7・05g)