10・18『自責点』自責点とは、ピッチャーが責任を持たなければならない得点である。
 自責点を決定するに当たっては、次の2点を考慮する。
 まず、イニングについて、同一イニングに2人以上のピッチャーが出場したときの救援ピッチャーは、出場するまでの失策(キャッチャーの妨害を含む)または捕逸による守備機会を考慮されることなく、それまでのアウトの数をもとにして改めてイニングを終わさなければならない。(i項参照)
 ついで、ランナーが進塁するに当たって失策があったときは、その失策がなくても進塁できたかどうかに疑問があれば、ピッチャーに有利になるように考慮する。
(a)自責点は、ヒット、犠牲バント、犠牲フライ、盗塁、刺殺、野手選択、四死球(故意四球も含む)、ボーク、暴投(第3ストライクのときに暴投してバッターを1塁に生かした場合も含む)により、ランナーが得点するたびごとに記録される。ただし、守備側が相手チームのプレーヤーを3人アウトにできる守備機会をつかむ前に、上記の条件をそなえた得点が記録された場合に限る。なお、守備側の妨害は、ここでいうアウトにできる守備機会に含まれる。
 (1)暴投はピッチャーの投球上の過失であって、四球またはボークと同様、自責点の決定に当たっては、ピッチャーが責任を負う。
「注1」ここでいう、”攻撃側プレーヤーをアウトにできる守備機会”とは、守備側がバッターまたはランナーをアウトにした場合と、失策のためにアウトにできなかった場合とを指し、以下これを”アウトの機会”という。
 本項後段は、守備側に相手チームのプレーヤー2人に対するアウトの機会があった後、前記の得点があっても、次に該当する場合は、ピッチャーの自責点とならないことを規定している。
すなわち、
 @その得点が3人目のアウトを利して記録された場合、あるいはそのアウトが成立したとき、またはそれ以後に記録された場合。
 Aその得点が3人目のプレーヤーが失策のためにアウトにならなかったときに記録されるか、またはそれ以後に記録された場合。
である。
 例えば、無死Aセンター前ヒット、Bピッチャー前バントを試みたとき、ピッチャーよりの送球を1塁手が落球してランナー1・2塁となり、Cのサード前バントでランナー2・3塁に進めた後、Dがセンターフライを打ち、Aはこのフライアウトを利して得点し、E三振に終わった。このイニングにはピッチャーの自責点はない。
 無死Aサードゴロエラーで生き、B三振、CのセカンドゴロでAをフォースアウトにしようとした2塁手からの送球をショートが落球してランナー1・2塁、Dホームラン、Eピッチャーゴロ、F三振に終わった。このイニングにはピッチャーの自責点はない。
 攻撃側プレーヤーに対する、”アウトの機会”を数えるに当たっては、種々の場合があるので、次に列記する。
 @バッターがファウルフライエラーによって打撃時間をのばされたとき、妨害または走塁妨害で1塁を得たとき、キャッチャーのだ3ストライクの後逸によって1塁を得た(第3ストライクのときのピッチャーの暴投を除く)とき、野手の失策によって1塁を得たとき、失策のためにアウトを免れたランナーに対してバッターの行為に起因した野手の選択守備の結果1塁を得たときは、いずれもバッターに対するアウトの機会は1度と数える。
 Aファウルフライエラーによって打撃時間を延ばされたバッターが、アウトになったとき、または野手の失策によって1塁を得たとき、アウトの機会は2度あったように見えるが1度と数える。
  また、このバッターの打撃行為に起因した野手の選択守備の結果バッターが1塁を得たときは、守備の対象となったランナーがすでにアウトの機会があったかどうかに関係なく、このプレイにおけるアウトの機会は2度と数える。(バッターについてはアウトの機会が1度あったことになる)
 B1度アウトの機会のあったバッターまたはランナーが、他のバッターの行為とみなされない原因、例えば盗塁またはこれに類する行為あるいは余塁を奪おうとした行為でアウトになったとき、または失策のためにそのアウトを免れたときは、アウトの機会は2度あったかのように見えるが、1度と数える。
 C1度アウトの機会があったバッターまたはランナーが、他のバッターの行為に起因した野手の選択守備でアウトになったとき、または失策のためにアウトを免れたときは、アウトの機会は2度と数える。
 D1度アウトの機会のあったバッターまたはランナーが、他のバッターとともに併殺となったときは、アウトの機会は3度あったように見えるが、2度と数える。
「注2」
 @自責点となるべき要素は、ヒット、犠牲バント及び犠牲フライ、盗塁、刺殺、野手選択、四死球(故意四球)、ボーク、暴投であり、
 A自責点に含んでならない要素は、守備失策、キャッチャーまたは野手の妨害、走塁妨害、捕逸、ファウルフライエラーである。
 Aの要素で1塁に生きたり、または本塁を得た場合はもちろん、2塁、3塁をを進むに当たっても、Aの要素に基づいた場合には、自責点とはならない。ただし、2塁、3塁をAの要素で進んだランナーが得点した場合でも、これらのミスプレイの助けをかりなくても得点できたと思われるときには、自責点とする。(10・18d参照)さらに、アウトになるはずのランナーが、失策によってアウトを免れた後に得点した場合には、自責点とはならない。
 また、守備の失策があった場合でも、そのランナーは失策と無関係に進塁したと記録員が判断したときは、Aの要素で進んだものとはならないで自責点となる。
(b)次の理由でバッターが1塁を得た後、得点することがあっても自責点とはならない。
 (1)ファウルフライの落球によって打撃の時間を延ばされたバッターが、ヒットその他で1塁を得た場合。
 (2)妨害または走塁妨害でで1塁を得た場合。
 (3)野手の失策で1塁を得た場合。
「注」失策によってアウトを免れたランナーに対して、バッターの行為に起因した野手の選択守備の結果、バッターが1塁を得た場合も、本項同様に扱う。
(c)失策がなければアウトになったはずのランナーが、失策のためにアウトを免れた後、得点した場合は自責点とはならない。
「注」本項は、原則としてランナーに対する守備が現実に行われ、失策によってアウトを免れた場合に適用すべきであるが、フォースプレイで野手がランナーをアウトにしようとするプレイをしないで失策した場合(例えば、ファンブル、後逸など)、その失策によってランナーが明らかに封殺を免れたと記録員が判断したときには、本項を適用しても差し支えない。
(d)失策、捕逸、あるいは守備側の妨害、または走塁妨害の助けをかりて進塁したランナーが得点した場合、このようなミスプレイの助けをかりなければ得点できなかったと記録員が判断したときだけ、そのランナーの得点は自責点とならない。
「注1」ランナーが得点したさい、自責点とするか否かを決定するに当たっては、ミスプレイの助けがなかったから進塁もまた得点もできなかったと記録員が判断した場合だけに本項を適用し、その他の場合、すなわち、現実にミスプレイの助けをかりて進塁していたが、もし、そのミスプレイをの助けがなくても、その後の自責点となる要素に基づいて当然進塁して得点できたと記録員が判断した場合には、自責点とする。
「例1」ヒットで出塁した1塁ランナーAが、捕逸で2塁に進んだ後、Bのシングルヒットで得点したような場合には自責点としない(シングルヒットでなく、3塁打以上の長打で得点した場合には自責点となる)が、Bが四球で出塁し、Cのシングルヒットで得点したような場合には自責点とする。
「例2」A四球、Bサードゴロエラーでランナー1・2塁の後、C・D四球を得てAが得点したような場合、失策のためアウトを免れたBがいなければ、AはDの四球によって得点できなかったから、Aの得点を自責点としない。しかし、Dが2塁打以上の長打を打って、A、Bが得点した場合には、Aを自責点とする。
「例3」A四球で出塁し、捕逸で2塁に進み、Bはサードゴロでアウトになり、Aは2塁に留まっていた後、Cのシングルヒットで得点したような場合、Aは、Bの内野ゴロのアウトを利して2塁に進むことができたとはみなさないで、Aの得点は自責点とはしない。もっとも、Cの3塁打以上の長打で得点したような場合には、自責点とする。
「注2」満塁のとき、バッターがキャッチャーまたは野手の妨害によって1塁を得たために3塁ランナーが得点した場合には、3塁ランナーの得点は自責点としない。
「注3」ファウルフライエラーによって打撃時間を延ばされたバッターの打撃を完了したプレイに基づくランナーの進塁は、ミスプレイの助けをかりた進塁をみなす。
(e)ピッチャーの守備上の失策は、自責点を決定する場合、他の野手の失策と同様に扱って、自責点の要素からは除かれる。
(f)ランナーが進塁するにあたって野手の失策があったとき、そのランナーの進塁が失策に基づくものかどうかを決める場合(失策による進塁ならば自責点とならない)には、もし無失策の守備だったら、果たしてその塁に進むことができたかどうかを仮想して決めるのであるが、そこに疑問の余地があれば、ピッチャーに有利になるように判定すべきである(すなわち、失策によって進塁したように決める)。
(g)あるピッチャーが回の途中でランナーを残して退いた後を救援ピッチャーが受け継ぎ、その任務中に前ピッチャーが残したランナーが得点した場合はもちろん、救援ピッチャーに対したバッターの打球が野手の選択守備で前ピッチャーが残したランナーをアウトにしたために、塁に出たバッターが得点した場合にも、その得点は(いずれの場合も自責点、非自責点を問わない)前ピッチャーのものとして数える。
「付記」ここでは、残されたランナーの数が問題であって、ランナーが誰であったかにこだわる必要はない。前任ピッチャーがランナーを残して退き、救援ピッチャーが出場して、その回の任務中に得点が記録されたときは、次の例外を除いてたとえ残したランナーがアウトにされることがあっても、その残したランナーの数までは前任ピッチャーが責任を負わなければならない。
 すなわち残されたランナーが盗塁に類する行為または妨害など、バッターの行為によらないでアウトになったときは、残されたランナーの数は減ぜられる。例としてFがある。
「例」@ピッチャー甲、四球のAを塁に残して退き、乙が救援、Bがゴロを打ってアウトになりAを2塁に進める、Cはフライアウト、DがシングルヒットしてAが得点=ピッチャー甲の失点。
 Aピッチャー甲、四球のAを塁に残して退き、乙が救援、BはAを2塁で封殺、Cゴロを打ってアウトになり、Bを2塁に進める。DのシングルヒットでBが得点=ピッチャー甲の失点。
 Bピッチャー甲、四球のAを塁に残して退き、乙が救援、BがシングルヒットしてAを3塁に送る、Cショートゴロを打ってAを本塁でアウトにする。この間Bは2進、Dフライアウト、EのシングルヒットでBが得点=ピッチャー甲の失点。
 Cピッチャー甲、四球のAを塁に残して退き、乙が救援、B四球、Cフライアウトを打ってAはキャッチャーからの送球で2塁を追い出されてアウト(これで甲のランナーはいないことになる)、D2塁打してB1塁から得点=ピッチャー乙の失点。
 Dピッチャー甲、四球のAを塁に残して退き、乙が救援、B四球後さらに丙と代わる、Cの打球でAを3塁に封殺、Dの打球もBを3塁に封殺、E3ランホームランする。=ピッチャー甲、乙、丙ともに失点各1。
 Eピッチャー甲、四球のAを塁に残して退き、乙が救援、B四球、Cシングルヒットで満塁、DはAを本塁に封殺、EはシングルヒットしてBとCとを本塁に送る。=ピッチャー甲と乙ともに失点各1。
 Fピッチャー甲、四球のAを塁に残して退き、乙が救援、BシングルヒットしたがAは3塁を奪おうとしてアウト、その間にBは2進、CはシングルヒットしてB得点。=ピッチャー乙の失点。
「注1」例@ ピッチャー甲、ショートゴロエラーに生きたAを残して乙と代わる。B四球後Cの打球はAを3塁に封殺、D3ランホームランする。=Cがピッチャー甲の失点(非自責点)となり、B・Dがピッチャー乙の失点(自責点)となる。
例A ピッチャー甲、サードゴロエラーに生きたAを残して乙と代わる。B四球後Cの打球はAを3塁に封殺、DシングルヒットしてB得点、E・F凡退=Bが甲の失点(非自責点)となる。
「注2」本項「付記」の後段に述べられている前任ピッチャーの残したランナーの数が減ぜられる場合には、前任ピッチャーの残したランナーが救援ピッチャーに対したバッターと共に併殺されるか、または救援ピッチャーに対したバッターの行為で前任ピッチャーの残した2ランナーが併殺された(このさいは、1が減ぜられるだけ)場合、及び前任ピッチャーの残したランナーが余塁を奪おうとしてアウトになった場合も含む。
(h)前任ピッチャーがバッターの打撃を完了させないで退いたときには、次の要項によって各ピッチャーの責任が明らかにされる。
 (1)ピッチャーが代わって出場した当時、ボールカウントが次のようなときであって、そのバッターが四球を得た場合には、その四球を得たバッターを前任ピッチャーが責めを負うべきバッターとして記録し、救援ピッチャーの責任とはならない。
  ストライク0−2ボール、ストライク1−2ボール、ストライク0−3ボール、ストライク1−3ボール、ストライク2−3ボール
 (2)上記の場合、バッターが四球以外の理由、すなわちヒット、失策、野選、封殺、死球などで1塁に生きたときは救援ピッチャーの責任とする。(バッターがアウトになったときも救援ピッチャーの責任となる)
「付記」このことは、10・18(g)に抵触するものではない。
 (3)ピッチャーが代わって出場した当時、バッターのボールカウントが次のような場合には、そのバッター及びそのバッターの行為はすべて救援ピッチャーの責任とする。
  ストライク2−2ボール、ストライク2−1ボール、ストライク1−1ボール、ストライク0−1ボール、ストライク2−0ボール、ストライク1−0ボール
(i)同一イニングに2人以上のピッチャーが出場したときの救援ピッチャーは、そのイニングでの自責点の決定に当たっては、出場するまでの失策又は捕逸によるアウトの機会の恩恵を受けることはできない。
「付記」本項の目的は、救援ピッチャーが自責点にならないことを利用して、無責任な投球をするのを防ぐためのものである。
 救援ピッチャーにとっては自責点となっても、チームにとっては自責点とならない場合がある。
「例1」2死、ピッチャー甲、四球のAと失策で出塁したBとを残してピッチャー乙と代わる。Cが3点ホームランする。=ピッチャー甲の自責点はなし。ピッチャー乙の自責点は1。
「例2」2死、ピッチャー甲、四球のAとBとを残してピッチャー乙と代わる。C失策で出塁、Dが満塁ホームランする。=ピッチャー甲、乙とも失点2、自責点はなし。
「例3」無死、ピッチャー甲、四球のAと失策で出塁したBとを残してピッチャー乙と代わる。Cが3点ホームランする。D、Eともに三振。F失策で出塁。Gが2点ホームランする。=ピッチャー甲失点2、自責点1。ピッチャー乙失点3、自責点1。
「注」イニングの途中から出場した救援ピッチャーの自責点に決定に当たって本項が適用されるために、チームの自責点より、ピッチャー個人の自責点の合計のほうが多くなる場合がある。なお、救援ピッチャーが自責点となるランナーを残して退いても、それ以後の失策または捕逸によるアウトの機会の恩恵を受けることはできる。