10・13『失策(エラー)』
 バッターの打撃の時間を延ばしたり、アウトになるはずのランナー(バッターランナーを含む)を生かしたり、ランナーに1個以上の進塁を許すようなミスプレイ(例えば、ファンブル・落球・悪送球)をした野手に失策(エラー)を記録する。
「付記1」はっきりとしたミスプレイをともなわない緩慢な守備動作は、失策とは記録しない。
「付記2」次のような場合には、記録員が失策を記録するに当たって野手がボールに触れたか否かを判断の規準とする必要はない。例えば、平凡なゴロが野手に触れないでその股間を通り抜けたり、編凡なフライが野手に触れないで地上に落ちたようなときには、野手が普通の守備行為をすれば捕ることができたと記録員が判断すれば、その野手に失策を記録する。
「付記3」頭脳的誤り、または判断の誤りは失策と記録しない。ただし、本規則で特に規定された場合を除く。
(a)野手がファウル飛球を落として、バッターの打撃の時間を延ばした場合は、その野手に失策を記録する。その後、バッターが1塁を得たかどうかには関係しない。
「注」野手が普通の守備行為でなら捕らえることができたと記録員が判断したときだけ、失策を記録する。(10・14e参照)
(b)野手がゴロを捕るか送球を受けて、1塁またはバッターランナーにタッグすれば十分アウトにできたにもかかわらず、タッグし損じたためにバッターランナーを生かした場合には、その野手に失策を記録する。
(c)フォースプレイにおいて、野手がゴロを捕るか送球を受けて、塁またはランナーにタッグすれば十分アウトにできたにもかかわらず、タッグし損じたためにランナーを生かした場合には、その野手に失策を記録する。
「注」上記のフォースプレイによるアウトの場合だけに限らず、タッグアウトの場合でも野手がランナーにタッグすれば十分アウトにできたにもかかわらず、タッグし損じたためにランナーを生かしたときには、その野手に失策を記録する。
(d)
 (1)送球がよければランナーをアウトにできたと記録員が判断したときに、野手が空く送球したためにランナーを生かした場合には、その野手に失策を記録する。ただし、ランナーが盗塁を企てたとき、盗塁を防ごうとした野手が悪送球をしても、本項の失策は記録されない。
 (2)野手がランナーの進塁を防ごうとして悪送球をした場合に、そのランナーまたは他のランナーが、その送球とは関係なく進塁できたと思われる塁よりも余分に進塁したときには、その野手に失策を記録する。
 (3)野手の送球が不自然なバウンドをしたり、各塁・投手板・ランナー・野手あるいは審判員に触れて変転したために、ランナーに進塁を許した場合には、このような送球をした野手に失策を記録する。
「付記」この規則は、正確に送球した野手にとっては酷にすぎるように見えるが、ランナーの進んだ各塁については、その原因を明らかにしなければならない。
「注」夜間照明のライトまたは太陽の光線が、プレーヤーの目を射て捕球が妨げられた場合にも、上記と同様送球した野手に失策を記録する。
 (4)上述の場合、悪送球によって進塁したランナーの数及び塁数には関係なく、常にただ1個の失策を記録する。
(e)時機を得たしかも正確な送球を野手が止め損なうか、または止めようとしなかったために、ランナーの進塁を許した場合には、その野手に失策を記録し、送球した野手には失策を記録しない。もしそのボールが2塁に送られたときには、記録員は2塁手または遊撃手のうちのどちらかがその送球を止めるはずであったかを判断して、その野手に失策を記録する。
「付記」野手が送球を止め損なうか、止めようとしなかったために、ランナーの進塁を許したがその送球が時機を失したものと記録員が判断した場合には、このような送球をした野手に失策を記録する。
(f)審判員がバッターまたはランナーに妨害若しくはオブストラクションで進塁を許したときには、このような妨害行為を行った野手に失策を記録する。この場合、進塁を許されたランナーの数及び塁数には関係なく、常にただ1個の失策を記録する。
「付記」審判員がオブストラクションによって、バッターまたはランナーに与えた塁と、プレイによってバッターまたはランナーが進むことができたと思われる塁とが一致したと記録員が判断したときには、オブストラクションをした野手には失策を記録しない。
「注」例えば、バッターが3塁打と思われるヒットを打って1塁を経て2塁に進むとき、1塁手に走塁を妨げられ、審判員がバッターに3塁を与えた場合などには、バッターに3塁打を記録し1塁手には失策を記録しない。
1塁ランナーが1・2塁間でランダウンされたとき、2塁手がオブストラクションをしたために審判員がそのランナーに2塁を与えた場合などには、その2塁手に失策を記録する。

10・14 次の場合には、失策を記録しない。
(a)ランナーが盗塁を企てたとき、ピッチャーの投球を受けたキャッチャーが盗塁を防ごうとして悪送球しても、そのキャッチャーには失策を記録しない。ただし、盗塁を企てたランナーがその悪送球を利して、さらに目的の塁以上に進むか、あるいはその悪送球に乗じて他のランナーが1個以上進塁したと記録員が判断した場合には、そのキャッチャーに失策を記録する。
(b)野手が普通に守備して、しかも好球を送ってもランナーをアウトにすることはできなかったと記録員が判断した場合には、野手が悪送球してもその野手には失策を記録しない。ただし、その悪送球によってそのランナーまたは他のいずれかのランナーが、送球が良くても進塁できたと思われる塁以上に進塁したときには、その野手には失策を記録する。
「注」野手が難球に対して非常に好守備をしたが、体勢が崩れたために悪送球をした場合には、送球がよければバッターまたはランナーをアウトにできたかもしれないと思われるときでも、その野手には失策を記録しない。ただし、本項後段のような状態になったときには失策を記録する。
(c)野手が併殺または三重殺を企てた場合、その最後のアウトをとろうとした送球が悪球となったときは、このような悪送球をした野手には失策を記録しない。ただし、その悪送球のために、いずれかのランナーが余分に塁に進んだときには、このような悪送球をした野手に失策を記録する。
「付記」併殺または三重殺のとき、最後のアウトに対する好送球を野手が落としたときには、その野手には失策を記録し、好送球をした野手には捕殺を与える。
(d)野手がゴロをファンブルするか、飛球・ライナー・送球を落とした後、直ちにボールを拾ってどの塁でもランナーを封殺した場合には、その野手には失策を記録しない。
「注1」本項は、アウトが成立した場合だけでなく、塁に入った野手が送球を捕え損じて封殺し損ねた場合にも適用する。この際は送球を捕え損じた野手に失策を記録する。
「注2」送球を受けた野手が塁またはランナーにタッグすれば十分アウトにできたにも関わらず、タッグし損じたためにランナーを生かしたが、直ちに他の塁に送球してランナー(バッターランナーを含む)を封殺した場合にも本項を適用する。
(e)無死または1死のとき、3塁ランナーがファウル飛球の捕球を利して得点するのを防ごうとの意図で、野手がそのファウル飛球を捕えなかったと記録員が判断した場合には、その野手には失策を記録しない。
(f)ピッチャー及びキャッチャーは、他の野手に比べてボールを扱う機会が非常に多いので、投球に関連するミスプレイは”暴投(ワイルドピッチ)”または”捕逸”(パスボール)と呼んで、その記録上の処理については10・15に明示する。従って、このような暴投及び捕逸は失策と記録しない。
(1)バッターが四死球で1塁を許されるか、暴投または捕逸によって1塁に生きた場合には、ピッチャーまたはキャッチャーには失策を記録しない。
 (@)第3ストライクが暴投になり、バッターが1塁に生きた場合は、三振と暴投とを記録する。
 (A)第3ストライクをキャッチャーが逸したためにバッターが1塁に生きた場合は、三振と捕逸とを記録する。
「注」第3ストライクを捕え損じたキャッチャーが、直ちに投球を拾いなおして1塁に送ったが、悪送球となってバッターランナーを生かした場合、送球がよければアウトにできたと記録員が判断すれば、暴投または捕逸を記録しないで、キャッチャーに失策を記録する。
 ただし、キャッチャーの悪送球とは関係なく、バッターランナーが1塁に生きたと記録員が判断すれば、キャッチャーには失策を記録しないで、暴投または捕逸を記録する。もっとも、この悪送球によってバッターランナーが2塁以上に進むか、他のランナーが送球が良くても進塁できたと思われる塁以上に進んだ場合には、暴投または捕逸を記録するとともに悪送球をしたキャッチャーに失策を記録する。
(2)ランナーが捕逸、暴投またはボークによって進塁した場合には、ピッチャーまたはキャッチャーには失策を記録しない。
 (@)バッターに対するフォアボール目が暴投または捕逸となったために、バッターまたはランナーが進塁して、次のどれかに該当した場合には、フォアボールとともに暴投または捕逸を記録する。
  @バッターが一挙に2塁に進んだ場合。
  Aランナーがバッターの四球によって進塁を許された塁以上に進んだ場合。
  Bバッターの四球によって進塁を許されなかったランナーが、次塁に進むか、あるいはそれ以上の塁に進んだ場合。
 (A)第3ストライクの投球を捕らえ損じたキャッチャーが、直ちにボールを拾い直して1塁に送るか、またはタッグしてバッターランナーをアウトにする間に、他のランナーが進塁した場合には、そのランナーの進塁を暴投または捕逸による進塁とは記録しないで、アウトになったプレイに基づく進塁と記録する。従って、バッターには三振を、各野手にはそのプレイに応じて刺殺、捕殺を記録する。
「注」上記の場合、キャッチャーがバッターランナーをアウトにする代わりに、他のいずれかのランナーをアウトにしたときも同様に扱う。ただし、無死または1死で1塁にランナーがいたので、バッターが規則によってアウトになったとき、ランナーが暴投または捕逸で進塁した場合には、ランナーには暴投または捕逸による進塁と記録する。